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「血圧は少し下つたしね」
「あ、いゝ、いゝ。なんでもありやしない。今すぐ行かう」
それが堂本だつた。
思はず時間がたつてしまつた。房一は腰を上げた。前脚の上に顎をのせて長々と寝そべつていた犬は急に起き上つて身ぶるひした。徳次は、房一の往診の時間を大分遅らせたのにやつと気づいた。
鬼倉は一瞬、相手を地着きのごろか何かと思つたらしい、一種の殺気をひらめかした。
「脚気の方は?」
「なんだ、さつぱり判らんぞう」
気がつくと、ふしぎな位人影がちつとも見えなかつた。よく乾いた路がのんびりとした曲り工合を見せて前方を走つていた。部落のとつつきの石垣の突き出た農家の先を曲ると急に家並びが見えて来た。
声をひそめて、富田が訊いた。
「いや別に忙しいこともありませんですよ」
しかし家族たちはヌルすぎるといって、入浴しなかった。そこで温泉加熱の装置を施したが、薪をたき、釜の中をグルグルまいたパイプに水道を通し、湯となって湯槽へ流れこむ仕掛けで、入浴している方は温泉気分であるが、外では薪をたいているのだ。温泉場で釜の火をたくとは味気ない話だ。
もともと口下手ではあつたが、まだ舌がもつれる風で、一口ごとに息をついて云つた。
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